新型コロナウイルス感染拡大後の事務所経営

2020年11月7日

 今年も 冬の到来が近づき、新型コロナウイルス感染者数はここに来て増加しています。

どうやら、密閉・密集・密接の3密回避やソーシャルディスタンス、ホームステイなどという新生活様式は改められそうもなく、

新型コロナで社会は大きく変わろうとしているようです。

 そこで今回は「新型コロナウイルス感染拡大後の会計事務所経営」と題し、IMPラボマンスリーレポートとお送ります。

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《IMPラボ マンスリーレポート》

新型コロナウイルス感染拡大後の事務所経営

 

1 「新型コロナウイルス感染拡大」で社会は大きく変わっています

 1.政府の方向転換

 日本政府は中小企業の廃業増加を容認ことに転換し、今後は新陳代謝を促して、生産性向上を目指すとしています。

 2.新型コロナ感染拡大で中小企業が大打撃

 中小企業の廃業・倒産が増加しています。特に、飲食・宿泊・小売・観光・医療などのサービス業が厳しい経営となっています。

 3.外部との接触を避けるビジネスモデルの台頭

 テレワーク、ビデオ会議、ビデオ営業、オフィスの縮小閉鎖、監査法人のデジタル監査など外部との接触を避ける企業行動が模索

 されています。

 4.経営マネジメントの変化

 売上の激減により資金の源泉が枯渇したことにより、キャッシュの重要視するマネジメントに切り替わっています。

 各企業とも手元資金の蓄積に努め、有利子負債の増加傾向も見られます。

 5.消費者行動の変化

 消費者は店舗購入からネット購入へあるいは店内飲食から家中飲食へと大きく移行しました。

 多くの業種がeコマースを考えるようになっています。

 6.日本のITリテラシーの低さが露呈

 特別定額給付の大混乱に見られたように、ITの技術水準はともかく、ITを使いこなしてないことが明白になりました。

 そこで政府はマイナポイント事業を開始するなどテコ入れしていますが、その低調さによりリテラシーの低さが露呈しています。

 7.減らない税理士登録数

 2020年までの10年間の税理士増加数は7,189人です。その前の2010年までの10年間の増加数は7,150人です。

 中小企業が減少しだしている中で税理士増加数はまったく減っていません。

 このことは明かに過当競争時代の到来兆候を示しています。

 *なお、2016年経済センサスでは、会計事務所数は31,208件、従業者数177,318人(事務所平均5.7人)と従業者数は減り

  だしています。

 

 

2 固定観念の払拭が必要では? 再考しなければならない会計事務所業務

 これだけ社会環境が変化して来ていれば、「企業は環境適応業」と考えれば、当然のことながら会計事務所の業務も変化させて

 いかねばなりません。では、どのようなことが考えられるのか、考えてみましょう。

 1.月次巡回監査

 記帳環境が会計ソフトの普及によって変化して来ている中で、新型コロナ感染によりさらに顧客意識を変化させていますが、

 果たして税務を中心とした月次巡回監査がすべての顧客に必要なのでしょうか?

 ここは頭ごなしに「そんなことは考えられない!」ではなく、一度、冷静に考えてみる必要があるのでないのでしょうか。

 もう戦後から80年近く経ち、教育も経営者の意識も技術も全く違うのですから。

 2.顧客価値の再考  3密を避ける

 これまで、顧客ニーズは「税務にある」という強固な前提の中で会計事務所は「税務・決算・申告」業務を行って来ていますが、

 これからの過当競争を避けていくためにも、従来から同一の価値ではなく、顧客・同業者・自社のニーズと対応の3密を避けな

 ければならないのではないのでしょうか。

 すでに一部の同業者では、贈与や事業承継、M&Aなどにシフトしていますが、ふつうの会計事務所も新しい顧客価値を立てて

 めざしても良いのではないのでしょうか?

 3.組織の再編成

 顧客企業規模も多種多様で、経営者意識もまちまちな顧客ニーズに応えていくためには、現在のような「顧問先÷担当者数」と

 いうようなフラットな考え方でいいのでしょうか?

 もっと、適材適所的な組織体制を再検討する必要があるのでは。

 

 

3 これからの会計事務所経営は? 一考察

 1.業務方針を見直しする

 いま一度、当事務所が目指している「顧客像」とはどんな企業なのか、を考えてみてはどうでしょうか。

 そしてその企業に応えるべき一番の価値は何なのかを考えてみれば、業務方針の見直しにつながって、内部的も外部的にもやって

 行かなくてはならないことが明確になるのではないのでしょうか?

 2.包容力と強いリーダーシップが必要

 それを進めていくには、包容力があってかつ強いリーダーシップが求められます。

 それだけ所内にある固定観念は強固な岩盤であるということです。

 3.人材育成の必要性

 会計事務所の業務というものは、人が人と会って行う属人的な業務です。

 だからこそ、他の業種以上に人こそが資産の業界です。

 そんな人材の顧客に対する指導力と解説力を向上させていくには、経営者にモノが言える「勇気」と「知識」と「智恵」を

 教育する必要があります。

 4.事務所のITリテラシー向上

 これからは中小企業経営にもITは避けられない要素です。

 そこで、ITリテラシーが低い顧客を指導する必要がありますが、そのためにはITに弱い事務所内のITリテラシーを向上

 させる必要があります。それが所内のICT教育にも結びつき、その経験が顧客のIT指導にも役立つことになります。